「生成AI」と司法書士について
最先端のテクノロジーと言えば、「生成AI」を思い浮かべる人は多いはずです。私自身もChatGPTをはじめとする「生成AI」の発展には驚かされるばかりです。そんな生成AIですが、社会のあらゆる分野でどのような変革を起こすのか注目を集めています。士業である司法書士の皆様も、「AIが自分の仕事を奪うのではないか」といった漠然とした不安を抱いているかもしれません。しかし、生成AIは司法書士の仕事を「奪う」ものではなく、「変える」ものだと考えております。生成AIが司法書士業務にどのような影響を与え、未来の働き方をどう変えていくのかを考察していこうと思います。
まず生成AIとは何ができるのかということですが、主に「情報の整理・要約」「文書の作成・校正」「調査・分析」といった分野でその真価を発揮します。これらのタスクは、司法書士の日常業務の多くの部分を占めているのではないでしょうか。
例えば、登記申請書で考えてみると、必要な情報を生成AIに与えると適切な書式で下書きを作成することができるかもしれません。
では、実際に生成AIを活用した場合にはどのようなことができるのか考えてみました。
(1) 文書作成・校正の効率化
・定型文書の自動作成:供託書、訴状、答弁書、契約書など、定型的な文書のひな形作成。
・複雑な文章の要約:判例や法律文献、長文の依頼者からのメールなどを要約し、ポイントを素早く把握。
・誤字脱字チェック・文章校正:作成した文書の誤字脱字をチェックし、より自然で分かりやすい文章に修正。
(2) 調査・情報収集の補助
・法律関連情報の検索:特定の法律条文や判例を検索し、関連する情報や解説を瞬時に取得。
(3) 顧客対応の質の向上
・AIチャットボット:事務所のホームページに設置し、定型的な質問(「営業時間は?」「相談料は?」など)に自動で回答。
・議事録の自動作成:依頼者との面談内容を録音し、その内容から議事録を自動作成。
色々考察してみましたが、結果として生成AIは司法書士の仕事を奪うのでしょうか?
答えは「No」だと考えます。重要なのは、生成AIはあくまで「ツール」であり、司法書士の「代わり」にはならないということです。なぜなら、司法書士の本質的な価値は、依頼者の状況を理解し、最適な解決策を提案するコンサルティング能力にあるからだと考えるからです。依頼者が抱える課題は千差万別であり、画一的な解決策は存在しません。依頼者の心情に寄り添い、専門家としての知見を活かしたアドバイスは、AIには到底代替できるものではないからです。
また法的判断を下す専門家としての責務も重要なポイントだと考えます。登記申請や裁判手続きには、厳格な法的判断が求められます。作成した文書の正確性を最終的に確認し、責任を負うことはAIにはできないことです。
また相続や紛争など、依頼者が人生の岐路に立たされている場面で、安心して相談できるのは、生身の人間である司法書士です。共感し、信頼関係を築く力は、AIには決して真似できない強みだと考えます。
生成AIを仕事を奪ってしまう「脅威」と捉えるのではなく、「強力なパートナー」として活用することで、司法書士の働き方はよりクリエイティブで生産性の高いものに変わります。
定型的な文書作成や調査業務をAIに任せることで、空いた時間を、依頼者との対話や、より複雑な案件の解決策検討、事務所の経営戦略立案といった、付加価値の高い業務に振り分けることができると考えます。またAIが収集・分析したデータを活用し、これまでになかった新しいリーガルサービスを開発する可能性も広がります。
少し見方を変えると働き方の柔軟性の向上も活用できるのではないかと考えます。AIを活用することで、場所や時間にとらわれずに業務を進めることができ、ワークライフバランスの改善にもつながります。
生成AIという新しい波を乗りこなし、これからの新しい司法書士業務として是非ご活用ください。