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2026年3月23日 (月)

マイナ保険証資格確認の「●表示」とCP932(Windows-31J)

こんにちは。リーガル漢字/地名担当の総務部・網本です。

マイナ保険証の利用が本格化してきていますが、マイナ保険証による資格確認で、一部の方のお名前の文字が●表示になる。ということがおきています。

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マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問|厚生労働省

Q38 マイナポータルや医療機関等システムの画面上に、自分の漢字氏名や漢字住所の一部に黒丸文字が含まれている場合、どうしたらよいですか。

これについては、「髙」「﨑」といった頻度の高い文字については、令和8年3月23日以降に正しく表示できるようになることが発表されています。「拡張文字388文字[948KB]」のリンク先の以下の資料で詳しく解説されています。

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オンライン資格確認における黒丸表示の解消について

今回対応されるのは「IBM拡張文字」(全388文字)と呼ばれるものです。これはIBMがPCで日本語を扱う上でJIS C 6226-1978(現在のJIS X 0208。いわゆる「JIS第1第2水準漢字」)では足りない文字を追加拡張したものです。つまり「IBMの外字」です。さらにNECはIBM拡張文字を元にメインフレーム(大型コンピューター)で使われている①℡㈱などの「NEC特殊文字」として追加し、IBM拡張文字と重複する14文字(㈱№℡∵とⅠ~Ⅹ)を省いて「NEC選定IBM拡張文字」(全374文字)として、互換性のためにIBMとは別の位置に追加しました。こちらは「NECの外字」ですね。

これらIBMとNECの別々の外字だったものが、Windows3.1開発時に統合され、CP932(Windows-31J)という文字セットになりました。でもこれはJIS漢字に対しては相変わらず「マイクロソフトの外字」ですし、CP932は「マイクロソフトのShift JIS」です。さらにここで大きな問題が発生します。IBM拡張とNEC選定IBM拡張文字は内容がほぼ同じにもかかわらず、別の文字として存在しています。たとえば「髙」はIBM拡張ではFBFC、NEC選定IBM拡張ではEEE0というコードです。ひとつの文字が2つのコードを持つわけです。

JIS漢字とUnicodeは一対一で対応していますから、JIS→Unicodeに変換してから逆にJISに戻してたら必ず同じ文字になります。しかし「髙」はUnicodeには1つしかないのでCP932の「髙」をUnicodeに変換してから逆にCP932に戻そうとすると、候補が2つあるので同じ文字には戻せない。ということになります。元のデータに戻せない、というわけです。

オンライン資格確認のシステムのデータはUnicodeで、データの登録にはUnicode(UTF-16/UTF-8)に加えてShift JISが選択できるようです。この場合、登録時にUnicodeに変換されますが、元のShift JISに戻せないIBM拡張は●に変換していた。ということと思われます。

しかし、NEC選定IBM拡張文字については、コード入力しても自動的にWindowsがIBM拡張に統一してくれているようなので、NEC選定IBM拡張文字の文字は規格上では存在するけれども実際にはほぼ存在しない。ということのようです。規格を厳格に解釈するのと、人の名前が●で表示される不都合との重要度を勘案し、規格の解釈を緩くする(規格上は2つあるが、実際には1つしかない、と解する)ことによって対応した、ということと思われます。

●になる文字は実際はIBM拡張文字だけではないので、今回の対策だけで●が完全に出なくなるというわけではありません。もしマイナ保険証にかかわる全てのシステムが行政事務標準文字になったとすれば、このような問題は起きなくなります。しかし、行政側はともかく民間側まで今とは違う文字の仕様に切り替える、というのはなかなか大変なことです。文字に関する問題を無くす道はまだまだ遠そうです。MS-DOS時代からの負の遺産ともいえるCP932には他にも大きな問題があるのですが、それはまた次の機会に。



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