「半大統領制」?
こんにちは。システムサポート部の門岡です。
目まぐるしく変化する世界情勢の中、「○○大統領が××しました」といった報道をよく耳にしますが、今回は、「半大統領制」についてふれたいと思います。
世界各国の政治制度(統治制度)は、モンテスキューが提唱した「均衡と抑制」に基づく権力分立制をどのように具体化させるかという観点から、立法府と行政府の関係について、多くの国で「議院内閣制」と「大統領制」のどちらかが採用されています。
議院内閣制とは、議会と政府を一応分離した上で、行政権を担う内閣の存立を立法府たる議会の信任に依存させる統治制度をいい、行政府のトップに内閣総理大臣(首相)が就任しています。一方、大統領制とは、議会と政府とを完全に分離し、政府の長たる民選の大統領が直接に国民に対して責任を負う統治制度をいい、行政府のトップに大統領が就任しています。
しかし、議院内閣制と大統領制は、実はその内容が各国によって異なっています。典型的な議院内閣制を採用するのがイギリス・日本であり、典型的な大統領制を採用するのがアメリカであることは皆さんもご承知の通りでしょう。
ところが、フランスやドイツには、大統領も首相も存在しています。
この点、大統領制には、2つのタイプがあり、①アメリカのように大統領が実質的な政治的役割を果たす場合と、②ドイツ・イタリアのように形式的、儀礼的に国家を代表する官職として大統領が置かれている場合、があります。そして、議院内閣制との対比で議論される大統領制は①の場合であり、②の場合は通常、議院内閣制として考えられています。
また、フランス(現行の第五共和制憲法下)の大統領制は、上記①でも②でもなく特殊な形態です。すなわち、大統領は直接国民により選ばれ、首相の任免、国民議会の解散、条約の批准、国民投票の実施、緊急事態での非常大権など単独で行使し得る権限を有しています。しかし、行政府は、首相が議会から選ばれていないにもかかわらず、議会に対して責任を負っています。このような形態は、大統領制と議院内閣制の中間形態と言われており、「半大統領制」と言います。
日本においても、安倍第二次政権下で憲法改正論議が活発になり、首相公選制の議論がなされています。現行日本国憲法では、議院内閣制を採用し、国会が内閣総理大臣を指名することになっているので、首相公選制の採用は憲法改正が必要になります。もし、首相公選制ということになれば、「議院内閣制」「大統領制」「半大統領制」以外の新たな統治制度といえますね。
※補足
★ドイツ
大統領(儀礼的・名目的行為のみを行うにすぎない)は、連邦会議(連邦議会議員とそれと同数の各州議会が選挙した議員で構成される)によって選出される。つまり、大統領は国民からの間接選挙で選出される。ちなみに、行政府の長は連邦総理大臣である首相(宰相)である。そして、首相の決定に基づき大統領は下院である連邦議会の解散権を有し、連邦議会はそれに対抗して内閣に対する不信任議決権を有している。したがって、ドイツは議院内閣制の国である。
★フランス
大統領は国民からの直接選挙で選出され、その大統領によって首相・国務大臣が任命されるが、内閣は下院に対して責任を負い、大統領が下院の解散権を有している。このように、フランスでは大統領制の要素と議院内閣制の要素の両方を加味している。したがって、フランスは半大統領制の国である。