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2022年3月 7日 (月)

手書き文字の字体について

お久しぶりです。リーガル漢字担当の総務部・網本です。
今回は手書き文字の話をしたいと思います。
パソコンやワープロがなかった頃、文章は手書きが基本でした。印刷物を作る場合は手書きの原稿から組版という作業を行い、その後いろいろな工程を経て印刷されます。電子データがメインとなった現代でも個々の工程の内容は異なりますが、大まかな流れ自体は同じです。
一番大きな違いは、入稿の方法が手書き原稿からデジタルデータに変わることにより、原稿の文字がそのまま後の工程に流れる、という点です。手書きの時代は、入稿された原稿を読んでその文字を並べていくので、「手書き文字の解釈」という工程がありました。手書き原稿は多種多様で、文字が崩されていたり、漢字が略されていたりすることもあります。とんでもない悪筆の方も居られたりします。原稿の文字を解読し、しかるべき文字をわりあてていく、その過程で略された文字が正しい漢字に直されたりします。
「正しい漢字とはなにか」については、過去の私の記事でも何度か取り上げてきました。いろいろ定義や考え方はありますが、「手書き文字」については、とりあえずは伝わればいいので、あまり厳しく考える必要もないと思います。しかし印刷物については、それぞれの局面の定義に沿った「正しさ」が求められると思います。
実例で考えてみましょう。あなたは誰かに手書きの原稿のワープロ入力を頼まれました。その中に「㐧一回労仂者集会亊務局」という一節がありました。あなたは「㐧」「仂」「亊」という文字を探して入力しますか?こういった場合、作者がその字形を用いるのについて特別な意図があるのであれば、そうするべきです。しかし多くの場合は単に「第一回労働者集会事務局」と入力したので差支えはありません。むしろ印刷物にする時点で、誤字や俗字・略字は正しい字(=辞書に載っている文字、等)に置き換えるべきです。
森鷗外の「鷗」の字は「鷗」が正しいのですが、鷗外の手書き原稿の中には「鴎」という表記のものもあると聞きます。手で書く時に(意味が通じる範囲で)略したり崩したりした文字は、活字にするときに「鷗」の時にしてもらえばよいのです。
この「手書き文字から正しい文字を特定する」というのは原稿入力だけではなく、役場の窓口などでも行われています。戸籍や登記の場合の「正しさ」は辞書的な正しさとは別で、戸籍簿や登記簿にかかれている字体の文字が「正しい文字」です。たとえそれが誤字や俗字であったとしても。手書き時代には戸籍簿や登記簿も手書きでしたから、文字に関しては大きな混乱があったであろうことは、戸籍統一文字や登記統一文字の文字数からも想像できます。
「㐧」という字は多くの場合は「第」でかまいません。おそらく氏名にはあまり用いられないのか、戸籍統一文字には「㐧」という字はありません。しかし「第一○○」とかは商号には多くあると思われますので、そこに「㐧」も紛れ込んでいるのでしょう。登記統一文字には「㐧」という字があります。
時代の流れで、文字も変わってきています。かつては誤字だったものが正しい文字として扱われるようになったりしたこともあります。しかし今の時点での誤った文字の使用は控えるべきでしょう。電子データでもメモ書きレベルのものもありますが、手書きと違って簡単に正しい漢字や難しい漢字を探して使うことができます。手で書くわけではないのですから、わざわざ略された字を探してきたところで楽になるどころか、手間がかかるだけです。
これは文字だけでなく、「株式会社」を「(株)」とか「㈱」と略したりすることについても同様で、データの仕様が決まっている場合や、枠が小さい場合以外は略さずきちんと入力したほうがよいと個人的には考えています。手書きに比べればデジタルデータの入力は手間がかからないのだから、それで楽できる分、普段から入力の段階で出版物レベルの品質を意識できればよりよいデータとなるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

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