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2014年4月30日 (水)

障害者権利条約の批准が成年後見制度に与える影響【後編】

前回に引き続き、障害者権利条約が日本の成年後見制度に与える影響についてのお話をしたいと思います。

参考までに、既に権利条約を批准しているイギリスの成年後見制度では、本人の意思決定支援を基軸とした「2005年意思決定能力法」が制度の基本法となっていて、すべての人には判断能力があるという前提に立ち、判断能力が不十分な状態にあってもできる限り自己決定を実行できるような仕組みを採用しています。成年後見が開始されても、契約能力は影響を受けない点が大きく日本と異なります。

同法では、本人の代わりに何らかの行為や意思決定をする場合は「本人のベスト・インタレストに適うように行わなければならない」とされており、他者による代行決定は、意思決定支援が困難な場合に、厳格な要件のもと認められています。
参考:自己決定を支援する法制度 支援者を支援する法制度
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/622/622-04.pdf

一方で日本の成年後見制度では、後見や保佐が開始されると、財産を保護する目的で、成年被後見人の法律行為を行う能力が一律制限されるだけでなく、医師や税理士等の資格や、会社役員等の地位を失ってしまうという権利制限の問題もあります。

また、成年被後見人の制限規定のある法令等は170を超え、なかには合理的な理由が考えにくい内容の規定もあるようです。(実践 成年後見No.49/2014.3「成年被後見人が受ける170を超える権利制限」)

仮に、後見の類型による制限規定を設けている現状から、本人の判断能力に応じて個別に判断する制度に変更した場合、本人の権利保護という面からは理想的だと思いますが、本人と取引をする相手側も混乱しないような公示方法や救済措置などの枠組みを整備していく必要があり、非常に難しい課題であると感じます。

さて、障害者権利条約を締結した国は条約の効力発効後、その履行状況について国連の専門委員会に対して2年以内に報告を行う義務規定(第35条)がありますので、日本は効力発効の2月19日から2年後の2016年2月頃までに、国連に報告しなければなりません。

既に専門のプロジェクトチームをつくり、成年後見制度の利用を促進させる法案(※)を検討中の政党もあるようですので、おそらく2016年の2月頃までに、現状の成年後見制度がさらに改善され、今よりもっと利用しやすくなるような施策が示されるのではと期待されます!

※公明党 大口議員のHP(「成年後見制度利用促進法案」要綱骨子案)
http://www.oguchi.gr.jp/2012/07/23/2951/


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