後見制度支援信託(後編)
『後見制度支援信託』、今回は後編をお届けします。
※『後見制度支援信託』前編
信託契約の種類は「元本補てん付の指定金銭信託契約」
(以下、本信託契約)というものです。
本信託契約で信託できるのは金銭だけなので、
本人の財産のうち、原則不動産以外は売却し、
親族後見人が当面本人のために使用する分だけ残して
残りは信託銀行に信託する形になります。
遺言がある場合は、遺言が優先されるようですが
本人が保有の意思をもって保有していた
不動産以外の財産(定期預金、保険契約、株式等)を
原則換金する運用にはどうかな・・・と思います。
特に死亡保険等は、自分の死後又は高度障害の時に、
配偶者や子が困らないようにとかけている方が
ほとんどだと思われるので、本人の意思を尊重した
運用をしてほしいものです。
また、平成23年10月3日時点で、本信託契約を
取扱うことができる金融機関は信託兼営金融機関の
43行のみとなっています。
ちなみに信用金庫は対象外となっています。
参照資料:金融庁HP
本信託契約は、元本補てん付き信託なので
預金保険制度により1,000万円まで保護されますが、
1,000万円以上は保護されません。
信託財産が1,000万円以上の場合、原則どおり、
全額1行に信託するとリスクがあると思われますので、
実務上の取扱いが気になるところです。
信託兼営金融機関のうち、実際に本信託契約が
取扱われているかどうかは各金融機関へご相談ください。
また、本信託契約の手数料関係(信託契約期間に信託銀行が
受け取る報酬、一時金の振込手数料、解約手数料)に
ついても、各金融機関ごと異なっていると思われますので
各金融機関へご相談ください。
最高裁から信託銀行に対して
手数料の低廉化の要請をしているようですが、
月額いくらぐらいになるのでしょう?
信託契約締結後は、はじめに立案された支援計画に従って
定期的に親族後見人の口座に定期交付金が信託銀行等から
振り込まれるようになります。
支援計画に含まれない一時的・臨時の支出があった場合
家裁に上申して指示書が出た場合のみ、
信託銀行等へ支払請求ができます。
信託の変更や、解約の手続をするときも
家裁の指示書が必要になります。
本人支援のために必要だと思って購入した物やサービスが、
今までは後見人だけの判断でよかったのですが、今後は
これらの支出が家裁に認められない場合もあり得るので、
後見人にとっては本人支援が消極的になる可能性も
あると思われます。
また、本制度を利用した場合、原則後見終了まで
家裁による親族後見人への後見監督が立件されない
とされています。
支援計画以外の支出があった場合は、家裁に上申する時に
家裁の監督機能が働くと思われるのですが、本人支援に
消極的な(家裁に上申すらしない)後見人に対する後見監督は
どのようにしていくのでしょう?
と、ここまでは問題点のほうに着目してきましたが、
今度は本制度のメリットについて考えてみたいと思います。
現状は、後見人が本人の財産を自由に処分できる強い権限が
あるために、一部の心無い人たちによる不正が起こりえます。
不正使用された分を取り戻そうとすると相当の時間とお金が
かかると思われますし、相続時にも泥沼の問題になるかも
しれません。
本制度を利用すれば、一定の歯止めがきくので、本人の財産を
確実に保護することができますし、将来の紛争のリスクも
減りますので、これらの点は大いに評価できます。
「信託」制度を利用することにより、本人の身上監護という
「目的」のためにのみ、財産が利用されることとなりますので、
何よりもこの点は大いに評価できます。
また、本人の財産に投資信託や有価証券等があった場合、
財産管理の専門家でない親族がこれらを保有したり、
換価したりするのは非常に手間がかかりますよね。
例えば株式を売却する場合、売却時期や価格等の正当性
の判断はどうしたらよいか等、迷われると思います。
本制度を利用すれば、親族にとってこのような
わずらわしい財産管理から開放されて、身上監護を
中心とした支援に注力できるようになると思います。
成年後見制度を利用する件数は年々増加しておりますので
本制度のように成年後見制度を支援していく枠組みが
ますます整備されていってほしいと思います。