後見制度支援信託(前編)
今回はちょっと真面目に成年後見のお話です。
成年後見制度を利用する場合、家裁に申立てをして
後見人を選任してもらいます。
現状、後見人として選任される約6割が
本人の親族ですが、この親族後見人が本人の財産を
使い込んでしまうケースが問題になっています。
最高裁の実情調査によると、
「親族後見人等による不正事案は10か月間に182件、
被害総額が約18億3000万円で、1年間に換算すると、
218件程度の不正が報告され、その被害総額は
約22億円になる計算である。」とのこと。
参照資料:日本弁護士連合会の意見書
単純計算して1件当たり1000万円の横領、
しかも本来一番本人のためを思って後見事務をしないと
いけない親族が財産を不正に使用するとは・・・心が痛みます。
親族後見人による不祥事を事前に防止することを目的として、
平成24年2月から「後見制度支援信託」(以下、本制度)の
運用が開始されます。
参照資料:信託協会HP
来月から運用が開始されるのですが、現時点で本制度の
運用に関して詳細な資料は一般公開されていません。
ということで後見制度支援信託がどういう制度なのか
調べてみました。
本制度は、成年後見制度を利用する場合に
被後見人が日常生活で使用しない現金や預貯金を
信託銀行に信託しておき、信託した金銭の中から
生活費や臨時支出に充当する金銭が
後見人に支払われるというものです。
信託協会のパンフレットによると、
本制度を利用するメリットは、
①本人の財産を安全・確実に保護できる、
②財産管理の専門家でない後見人の財産管理の負担を軽減できる、
ことだそうです。
参照資料:信託協会のパンフレット
本制度は、法定成年後見制度、未成年後見制度を
利用するときで、かつ、親族が後見人となる場合にのみ、
利用することができる、とされています。
そのため保佐、補助、任意後見は対象外です。
信託契約を締結するまでの主な流れは
次のようになっているようです。
①家裁に開始申立をすると、親族後見人を選任する前提で、
家裁が本制度の利用の適用を決定し、専門職後見人に連絡する
②一時的に専門職後見人(弁護士や司法書士)を選任する
③専門職後見人が日常生活の支援計画を立案する
④専門職後見人が本人資産を原則換価し、
信託契約を締結する旨の上申書を家裁に提出する
⑤家裁が後見人に指示書を発行する
⑥専門職後見人が信託銀行等へ指示書を提示し信託契約締結する
⑦専門職後見人が辞任し、以降親族後見人のみ単独後見となる
又は専門職後見人と親族後見人とが複数後見となる
長くなりましたので続きはまた明日の後編にて。