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2014年5月19日 (月)

電子書籍の中古販売について

こんにちは、法務部の津田です。
最近気になった電子書籍の中古販売について、少し書きたいと思います。

私個人は根っからの紙大好き人間なので、電子書籍を購入したことはないのですが、友人の多くが持ち運びの便利さという点でiPadやKindleのタブレットを通して電子書籍を購入しており、電子書籍が開始した当初にくらべて多種多様な種類の書籍が提供されるようになっていることからも最近気になっています。ただ購入後、読み終えていらなくなった書籍に関して、紙本であれば、古本屋に売るなり誰かに譲渡することもできると思いますが、電子書籍の場合は中古として流通させることはできるのか…考えてみると興味深いものです。

現行著作権法上、紙媒体の書籍に関しては、最初に適法に購入した時点で当該書籍についての譲渡権は消尽しているため、購入者は自由に転売することが法律上可能です。しかし電子媒体に関しては、コンテンツの配信事業者とユーザーの間の契約において、ユーザーによるコンテンツの売却が禁止されていることが多々あり、コンテンツの閲覧に関しても、利用するデバイスの仕組上、ユーザーが配信を受けたコンテンツを第三者のデバイスで利用することができない仕組みがとられています。

このような契約、仕組みは現行の著作権法上どうなるかというと、まず第一に、譲渡権の対象となる「複製物」とは書籍、CD等の有体物が前提とされており、電子書籍のコンテンツはそもそも譲渡権の対象とならないとされています。

第二に、紙媒体の書籍の場合、書店と購入者の間の契約は売買ですが、コンテンツ配信事業者とユーザーとの間に結ばれるのは、コンテンツをダウンロードし、デバイスに複製物を作成して利用することを許諾するライセンス契約であり、あくまで本を読むライセンスを手にしたわけであって、本そのものの所有権を得たわけではありません。

したがって複製物の譲渡がなされたことを要件とする著作権法26条の2第2項1号の適用の余地がない以上、やはりデジタル書籍の中古売買は適法ではないということになります。

現行法上デジタル書籍に関しては上記のような解釈になると思われますが、ダウンロードしたコンテンツを一切転売したり、よく友人や家族との間で行っていた「この本面白いから読んでみなよ」といった簡単な貸し借りができない現状が少し残念ですが、持ち運びの観点からするとやはり圧倒的に便利なので、部屋の積み重なった本の山を見てどうしようかと悩むぐらいならば、スペースをまったくとらないデジタル書籍の購入を今後検討してみたいと思います。

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