ガバメントクラウドと行政事務標準当用明朝フォント
前回、「ガバメントクラウド」構想と、それの文字要件「MJ+」(行政事務標準文字)についてご紹介しました。今回はその後の動向についてお知らせします。
「地方公共団体情報システムにおける文字要件の運用に関する検討会」は全8回で終了し、令和6年(2025年)7月に報告書が公開されました。成果として地方公共団体情報システムデータ要件・連携要件仕様書の「文字要件」が整備され、以下のものが作られました。
①行政事務標準文字(MJ+)(69,839文字)
②行政事務標準文字フォント(9,175文字)
③行政事務標準当用明朝フォント(40,567文字)
④同定支援ツール
①は文字セットの規格、②③はフォントの実装、④は乱暴に言えば行政事務標準文字の検索ツールです。②は行政事務標準文字のMJ文字との差分のフォントです。MJ文字のフォント(IPAmj明朝フォント)と組み合わせることによって、行政事務標準文字全体をカバーできます。
③行政事務標準当用明朝フォントについて補足します。前述の通り行政事務標準文字はMJ
とMJ+の2つのフォントで構成されています。それには行政事務標準文字が約7万字で、一般的なフォントファイルの上限(約6万5千字)を超えているため、全ての文字を1つのフォントに実装することができない、という事情も関係していると思われます。そこで扱いやすいように、文字情報基盤文字のフォントからあまり使われないであろう文字を除いたものに、行政事務標準文字フォントを追加してひとつにまとめたフォントを作成しました。これが「行政事務標準当用明朝フォント」です。
(デジタル庁との関係は不明ですが)一般社団法人デジタル広域推進機構から、これらを総合した「deluxe文字選択DWPI明朝4.00版」というソフトウェアが公開されています。このソフトの配布パッケージには、行政事務標準当用明朝フォント「DWPI明朝」も含まれています。このソフトは④同定支援ツール相当のものと思われます。
現状、インストールすれば即実行できるものではなく、Microsoft Accessか Access Runtime(無料) が必要なのと、結構難解なのとで、実際に動かせるまでのハードルはなかなか高いと思います。しかし、これをインストールすれば行政事務標準当用明朝フォントが利用できますし、IPAmj明朝フォントを併用すれば、全て行政事務標準文字を利用可能になります。そのしてソフトの機能は(漢字隙にとっては)感動的なものです。
実際には行政事務標準文字を利用することによって、外字を一切作らなくていいようにはならないとは思います。しかし外字を使わないといけないような局面は極めて低くなることが期待できます。所感としましては単に文字を揃えただけでなく、利用するための強力なツールも備わっているので、文字セットとして実用の域にまで達しているのではないでしょうか。行政事務標準文字は、我が国のコンピューター文字における一つの大きな到達点だと思います。実際には広く使われるようになるためには、まだまだ問題山積みではありますが。
【参考】
地方公共団体情報システムにおける文字要件の運用に関する検討会|デジタル庁
https://www.digital.go.jp/councils/local-governments-character-specification#report
検討会報告書(令和6年7月)
地方公共団体情報システムにおける文字要件の運用に関する検討会報告書(PDF/2,121KB)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/adb0d6b7-a01a-48c5-9332-4ac023529a1b/dc4a8f53/20240703_meeting_local-governments-character-operation_01.pdf
一般社団法人デジタル広域推進機構 - DWPI_mincho
https://www.digitalwidearea.org/dwpi_mincho
2024年4月 1日 ガバメントクラウドと行政事務標準文字
https://legal.blogat.jp/legal_blog/2024/04/post-c994.html
2023年6月12日 外字の要らない世界。
https://legal.blogat.jp/legal_blog/2023/06/post-dd28.html