IT先進国の事例から感じること
イノベーション開発部の大島です。お久しぶりです。
今回はKindleにて購入した書籍が興味深かったので、それについて思う点を書こうと思います。
購入した書籍は「未来型国家 エストニアの挑戦」という本で、エストニアの現在(とはいえ書かれたのは数年前のようですが)のITインフラの活用の紹介や取り組みに関して書かれています。ちなみにエストニアという国は比較的歴史が新しいこともあり、IoT ( Internet of Things ) の利用が日本よりも進んでいる国と言われています。個人的に興味を惹かれた部分はやはり仕事と関係があることもあり、会社設立に関する申請についての話題や日本で言うところのマイナンバーにあたる個人番号制度の活用に関しての部分でした。
その会社設立に関してですが、インターネットを介して行い、なんと30分程度で登録が可能だそうです。「インターネットを利用する」という一事において、「利用する」という部分だけ抜き出せば、弊社の“権”も負けていないと思いますが、日本と違いオンライン申請自体が一般的であり、国に審査される期間が非常に短い点が驚きです。これに関しては興味が引かれたのでもう少し調べてみました。
日本で言うところの定款などが定型の数種類しかなく、その中から選択するかたちで添付書類なども必要最低限のみとなっているようです。そのため、申請にかかるチェックなどにおいて定型処理化が可能となり、その結果処理時間が短縮されていったようです。
また、個人番号などの認証が容易なシステムがすでに社会で構築されている点などが日本のオンライン申請とは違う点であり、本人確認にあたる処理がシステムとして構築されている点が面白いと思いました。
個人番号に関しては日本のマイナンバーの参考元のひとつでもあることから、各個人に番号が振られICチップ付のカードで利用すると言った点は同じようです。また、日本ではマイナンバーが銀行や病院などの情報と結びつくことに大反対の意見も多かったように記憶していますが、エストニアでは当たり前のようにそれらが結びつくかたちで利用されているようです。
不正アクセスなどの心配がないのか気になりますが、おそらく社会としてデメリットよりもメリットを享受する方向を選択しているのでしょう。エストニアではないですが、中国のQRコードによる決済システムもある意味メリットを前提としてみれば同じようなものでしょうか。この辺は文化的な背景などが違うのでしょうが、システム間をつなぐ方法をいつも悩んでいる技術者としての立場からみると、基盤システムとして存在することはうらやましい限りです。
思い返せば“権”のオンライン申請対応版を出荷したのは2005年ごろ(権バージョン5の頃!懐かしい!)で、個人的にはこれからは書面がなくなり、何もかもがオンラインで申請する時代が近いうちに来ると胸が熱くなったことを覚えています。
しかし、10年以上経過した現在、日本はまだそこには到達していません(今の社会システムに対して到達するメリットが乏しかったために移行しなかった気もしています)。
今この書籍を読んで、あのときに思い描いた社会こそがここで描かれているエストニアという国に近い気がします。
一方で、近々オンライン申請の仕方が変わるような話も聞こえますし、国の電子政府のあり方自体が変わろうとしているといったニュースも耳にしています。人口規模や文化が違うためにエストニアのような社会に移行するには簡単ではないと思いますが、個人的には、日本もSF小説で描かれるようなその場で何もかもできる近未来的で面白い社会に早くなっていって欲しいなと思います。