ChatGPTの司法への利用について
イノベーション開発部の津田です。最近もはや日本は熱帯なのかと思うくらい暑い日々が続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
それで今回はChatGPTによる司法への利用等について興味深い試みがあったので書きたいと思います。
今年はChatGPTのことが大きな話題となり、連日メディア等で取り上げられて注目されたと思いますが、司法業界においてもその利用は試みられていました。
興味深かったのは、香港の法律事務所のAlbert Luk Chambersと香港中文大学に所属する研究者らが発表した論文「ChatGPT by OpenAI: The End of Litigation Lawyers?」で、実際の判例を題材にChatGPTに法律文書の作成と法的調査をさせて考察した研究が行われました。
この研究の内容を確認すると、ChatGPTが作成した法律文書はとてもAIが作成した文書とは思えないほどしっかりしており、文書内に具体的な判例と法律を示していることからも高度な法律文書のテンプレートを保持していることや、裁判で問題なく利用できるくらい高い文書作成能力を有していることが判明しています。
ここまでしっかりとした法律文書が短時間で作成できるのであれば、人間が行う書類作成の時間や判例等を探す時間が手間が大幅に省けて時間短縮になるので、今後も大いに利用される一方で、ChatGPTを過信するのは問題です。つい先日アメリカ・ニューヨーク州の弁護士がChatGPTに作成してもらった準備書面をろくに調べもせずそのまま利用したのか、架空の判例が文書内で使用されていたことに気づかずそのまま提出し、後にばれて謝罪・懲戒請求されたことがニュースになっていました。判例等は検索すれば一発でわかりますので、何も疑問を持たずChatGPTが作成するものがすべてを正しいと信じてそのまま利用するのはいかがなものでしょうか。
今後はOpenAI社のChatGPT以外に他社のAI機能が続々と発表されると予想され、AIの利用がさらに身近になると思われます。AIを活用するという面では、上記裁判例の実験のようにAIにいかに自分の意図したものを作成させ、作成物の利用・取捨選択できるスキルが必要になっていくのかもしれません。
私が子供のころ、ディープ・ブルーが初めてチェスの世界王者を倒して話題になり、そこから10数年で、AIが勝つのは不可能と呼ばれた将棋についても、プロ棋士が度々AIに敗北を喫する時代となりました。さらにたった数年で、身近なことから専門的なことでも質問すると瞬時に答えが帰ってくるAIシステムができるとは、すごい時代になったなとつくづく思いました。
今後もAIの進化は進むと言われていますが、あくまで便利に使うツールとしてとらえ、最終的にそれをどのように使うかという部分においては、人間の判断がより重要になってくるのでしょうね。