「しんにょう」の点はいくつか?
お久しぶりです。リーガル漢字担当の総務部・網本です。
今回は「しんにょう」の点はいくつか?というお話をします。あれ。しんにょうの点の数の話は、だいぶ前に一度していますね。ネタ切れでしょうか。
LEGALブログ(リーガル社員のここだけの話): 字種と字体と書体と。
上の話を踏まえると
①常用漢字と人名漢字のしんにょうは点ひとつ。
②表外字(=常用漢字以外の文字)は点ふたつ
ということになります。
常用漢字の字形は「常用漢字表」の「印刷文字における現代の通用字体」で定められています。また、利用頻度の高い表外字の字形は、「表外漢字字体表」で「印刷標準字体」と「簡易慣用字体」が定められています。
「道」(みち)は常用漢字なので点ひとつ。
「辻」(つじ)は表外字なので点ふたつ。
以上。(ひどい手抜きだ。新ネタがないじゃないか!)
ところが今回、この件について以前のブログを遡った上で改めて確認していて、初めて気付いたことがあります。それは常用漢字のこの文字です。
「遡」は常用漢字ですが、点2つが正しく点1つのものは「許容字体」なのです。なんでこのようなことになったのでしょうか。謎ですね。
常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)には、このようなもの=新字体が適用されていないものとして以下の文字がありました。
餌 えさ
遡 さかのぼる
遜 ソン
謎 なぞ
餅 もち
これらはすべて、平成22年の常用漢字改定時に追加された文字です。追加する文字の字体については、『現行の常用漢字表制定時に追加した95字については表内の字体に合わせ,一部の字体を簡略化したが,今回は追加字種における字体が既に,「印刷標準字体」及び「人名用漢字字体」として示され,社会的に極めて安定しつつある状況を重視し,そのような方針は採らなかった。』(文化庁・文化審議会国語分科会漢字小委員会『「「新常用漢字表(仮称)」に関する試案」』P13)ということになったんだそうです。ちなみにこの「現行の常用漢字表制定時に追加した95字」というのは、1981年(昭和56年)に告示された旧・常用漢字表で、元となった当用漢字に対して追加した文字のことです。
というわけで、正確には「常用漢字と人名漢字のしんにょうは、おおむね点ひとつだが例外もある」ということになります。全然すっきりしませんね。
漢字小委員会の議事録は、漢字好きには面白い・興味深いお話がたくさんありそうなので、またいろいろ読んでみたいと思います。
【参考】
常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)